初日は、神戸市内の某マンションでの点検・劣化診断の調査業務補助という書込み作業でした。
沖さんや私と同じ記録係の方と合流し、調査に使用する平面図や書き込み用の四色ボールペンを受け取りました。その後は調査者の方と二人一組になり、調査を行うお部屋に一軒一軒伺い、バルコニーや階段等の共用部分の調査を行いました。
調査者の方は、私が今回初めて業務補助を行うということで、書き込み箇所の指示をして下さったり、必要に応じて図面の修正をして下さったりと便宜を図って頂きました。
ですが、午前中は沢山の課題に直面し全く業務ができなかったのが実情です。
まず私が躓いたのが、平面図の読み方です。平面図にはマンションの構造と方位が記載されていますが、どの部屋も似たような構造をしていること・地図と違い周辺の建物や地形が全く記載されていないことから、自分がいまどこを移動しているのか分からないという問題が発生しました。
そのため調査者の方に「今私たちはここにいますよね?」と平面図を指さして確認することが多々ありました。
また、実際の構造と平面図上の構造が一致していないこともありました。
具体的には、平面図には南北に2か所ずつベランダがありこれとは別に入り口から向かって東側にもう一つベランダが実際にあったことです。
この三つ目のベランダの存在を失念し、指摘箇所を書き直すことになってしまいました。
平面図の読み取りに慣れることが必要と痛感しました。
次に躓いた点が、移動しながら文字を書く難しさです。
調査員の方は打診棒で壁や天井、床を只管叩きながら修繕箇所を口頭で次々と指摘しますので、記録員はそれを逐一平面図に転記する必要があります。
転記している間も記録員の方は調査を続行しますので、数秒で転記を終え、常に調査員の傍に付いていく必要があります。
そのため転記は立ったまま、或いは歩きながら行うことになりますが、普段着席して安定した姿勢で文字を書くことに慣れている私にとって移動しながら文字を書くことの難しさは想像を絶するものでありました。
直線を描いているつもりが大きく左右に折れ曲がってしまったり、
漢字を綺麗に書こうとしても大きく形が崩れてしまったりと苦しみました。
そして、最も躓いた点が地形図の空きスペースの活用です。
建物の損傷の内容は建物の構造が記載されていない余白に書き込み、黒点で示した損傷箇所と内容を直線で繋ぐことが転記の鉄則です。
ですが、修繕箇所が多くなるにつれて直線が重なったり、転記のための余白が無くなってしまったりする可能性があります。
これを防ぐためにどの位置から書き始めるかを考え、作業内容によっては文字や直線の向きを変える等して余白をフルに使用しながら転記を進める必要があります。
このことは沖さんが研修の段階から何度も仰っており、私もとにかく余白を上手に使用することを目標としていましたが、
「言うは易く行うは難し」。
思うように転記をすることができず、何度も駄目出しを食らうことになりました。
私は、平面図の外側の余白を兎に角使用し、複数の指摘箇所が被らないように直線を長めに引っ張ることにしていました。
ですがこれだと、長く直線を引っ張った分だけ直線で内側の余白が埋まってしまい損傷の内容を書くことができなくなること、また直線同士が重なり図面がごちゃごちゃしてしまうことになります。
このことを後から指摘され、問題点の存在が盲点だったことを猛省しました。
このように午前中の段階で問題点や改善すべき点が数多く見つかったため、昼食休憩の時間に同じ記録員の先輩の方にお話を聞き、時には質問をして午後からの作業に活かすように努めました。
その結果、午後は午前中よりも綺麗にかつ文字を見やすく書くことができたので良かったと思います。
今回初めて点検・補助業務を行って分かったことは二点あります。
一点目は、マンションに限らず建物の劣化は想像以上に激しいということです。今回点検を行ったのはマンション全体でも極一部の場所でしたが、ひび割れやタイルの剥離等は数十カ所に及びました。特にひび割れはひびの長さが5センチまで伸びているものもあり、驚きました。
二点目は、住民の方との信頼関係の構築の重要性です。
点検のため住民の方の居室へ伺った際、調査員の方が点検終了後も
「何か気になる点はございませんか?」
と住民の方に質問し、お話を伺っているのを拝見しました。
点検のためだとはいえ赤の他人の生活領域に足を踏み入れますので、大きな声ではっきりと挨拶をする。
点検中の住民の方への配慮や気配りは怠らないようにする。
お話にはきちんと耳を傾けるといった当たり前のことをしっかりと行い、信頼関係を築くことが業務を行う上で必要不可欠であることを知りました。
慣れないことも多々ありましたが、初日の勤務を無事終えたことを嬉しく思います。
これからも継続して勤務を続けていきたいです。